贈与・遺贈 Q&A

Q9. 住宅資金を子供に贈与したいのですが、特例はありますか?

住宅の購入は人生で最も大きな買い物の一つであり、親や祖父母からの資金援助を検討される方は非常に多いです。通常、数百万円、数千万円という資金を渡せば多額の贈与税がかかりますが、これには**「住宅取得等資金の贈与税の非課税特例」**という非常に強力な制度が存在します。

この特例を活用すると、父母や祖父母から18歳以上の子や孫に対して、住宅の新築、取得、または増改築のための資金を贈与する場合、一定の金額まで贈与税が非課税となります。2026年現在、非課税限度額は「省エネ等住宅」であれば1,000万円、それ以外の一般住宅であれば500万円となっています。これに通常の暦年贈与の基礎控除110万円を併用できるため、最大1,110万円まで無税で渡すことが可能です。

ただし、この特例を適用するには非常に厳しい要件と「期限」のルールがあります。主なポイントは以下の通りです。

  1. 受贈者の要件: 贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上であり、その年の合計所得金額が2,000万円以下(床面積が40〜50平米未満なら1,000万円以下)であること。

  2. 建物の要件: 日本国内の住宅であること、登記簿上の床面積が40平米以上240平米以下であること、中古住宅の場合は耐震基準を満たしていること。

  3. 期限の要件: 贈与を受けた年の「翌年3月15日」までにその資金を全額充てて住宅を取得し、かつ同日までにその家に入居(または入居が確実)していること。

特に「翌年3月15日」という期限は厳格です。もし新築工事が遅れて引き渡しが間に合わなかった場合、特例が受けられず多額の税金が発生してしまうという悲劇も起こり得ます。 また、この特例の最大の注意点は、**「税金がゼロになる場合でも、必ず税務署への申告が必要」**という点です。申告を忘れると、特例そのものが適用されず、通常の贈与税として課税されてしまいます。

行政書士としては、贈与契約書の作成はもちろん、この特例を利用した際に「他の兄弟との相続バランスが崩れないか」という点にも目配りします。住宅資金として多額の援助を受けたことは「特別受益」とみなされ、将来の相続時に他の兄弟から不満が出る原因になります。後々のトラブルを防ぐために、遺言書で調整したり、他の家族にも配慮した書面を作成したりすることが、円満な家族関係を守るための鍵となります。