「死因贈与」とは、贈与する人とされる人の間で**「私が死んだら、この財産をあなたにあげます」という約束(契約)**を交わすことを言います(民法554条)。「亡くなったことをきっかけに財産が移転する」という点では遺言(遺贈)と同じですが、法律上は大きな違いがいくつかあります。
まず、死因贈与は**「契約」**であるという点です。遺言は自分一人で作成でき、内容もいつでも自由に変更・撤回できますが、死因贈与は相手との合意が必要です。そのため、贈与契約書という形で書面を交わすのが一般的です。契約である以上、もらう側も「将来それをもらえる」という期待権を持つことになります。
死因贈与が特に有効なのは、**「負担付贈与」**とする場合です。例えば、「私の最期まで身の回りの世話や介護をしてくれることを条件に、死後にこの自宅を贈与する」といった契約です。もらう側にとっては、将来の報酬が確定しているため、介護へのモチベーションや安心感に繋がります。遺言でも似たようなことは書けますが、遺言は本人が勝手に書き換えてしまうリスクがあるのに対し、死因贈与契約は(一定の条件はありますが)一方的な破棄が難しいため、受ける側の権利がより強く守られる傾向にあります。
手続き上の違いも重要です。不動産の死因贈与の場合、生前のうちに「始期付所有権移転仮登記」という手続きをしておくことができます。これにより、将来の権利を保全できるのです。これは遺言ではできない強力な手段です。ただし、遺贈は登録免許税(名義変更の税金)が相続人なら0.4%ですが、死因贈与は相続人であっても2%かかるなど、コスト面でのデメリットもあります。
また、死因贈与において最も重要なのが**「執行者(手続きを行う人)」の指定**です。これをしておかないと、亡くなった後に他の相続人全員の協力(署名・実印)が必要になり、結局手続きが止まってしまうという悲劇が起こりかねません。
行政書士として死因贈与をご提案するのは、主に「法定相続人ではないが、長年尽くしてくれた人に確実に報いたい」というケースや、「確約を与えることで老後の安心を買いたい」というケースです。遺言と死因贈与、どちらがお客様の目的に合致し、かつ将来のトラブルを防げるか。当事務所では、登記費用や税金、親族関係のすべてを俯瞰して、最適な構成をご提案しています。