贈与・遺贈 Q&A

Q15. 贈与のせいで将来「争続」にならないか心配です。

 「良かれと思って行った贈与が、結果として家族をバラバラにしてしまった」……これは私たちが最も避けたい悲劇です。相続が「争続(そうぞく)」になってしまう最大の原因は、実は金額の多寡ではなく、**「不公平感」と「情報の不透明さ」**にあります。

贈与によるトラブルを防ぐための対策として、行政書士が推奨する「3つの柱」をご紹介します。

第一の柱は、**「法的に完璧な書類の作成」**です。 単なる口約束や、形式の不備がある契約書では、贈与者が亡くなった後に「これは本当に本人の意志だったのか」「認知症で判断力がなかったのではないか」といった疑義を差し挟む余地を与えてしまいます。特に、不公平な内容の贈与であればあるほど、公証役場で作成する「公正証書」を利用するなど、客観的に本人の確固たる意志であることを証明できる形にしておくことが、最大の防御となります。

第二の柱は、**「想いの可視化(付言事項の活用)」**です。 法律は機械的に数字を割り振りますが、家族の心は感情で動きます。遺言書や贈与の際、「なぜ長女にこの家を譲るのか」「次男には生前にこれだけの援助をしたから、今回はこうする」といった理由を、丁寧な手紙形式(付言事項)で残しておきましょう。親が何を考え、どのような感謝や期待を込めてその決断をしたのかを知ることで、納得感が生まれ、争う気力を失わせる効果があります。

第三の柱は、**「遺留分と特別受益への配慮」**です。 Q14で述べた遺留分を侵害しないことはもちろん、生前贈与を「なかったこと」にせず、相続時の遺産分割において適切に調整されるよう設計することが大切です。あるいは、あえて「持ち戻し免除の意思表示」を明確にすることで、特定の子供に多く残したいという意志を法的に確定させる手法もあります。

「争族」は、お金持ちだけの問題ではありません。むしろ、自宅以外の目立った現金がないご家庭の方が、不動産を分けることができずにもめる傾向にあります。行政書士は、お客様の家系図や財産目録をじっくりと眺め、「ここに火種がある」というポイントを事前に見つけ出します。そして、法律という冷たい盾と、想いという温かい言葉の両方を使って、ご家族の未来を守るお手伝いをいたします。