贈与・遺贈 Q&A

Q17. 贈与した後に「やっぱり返して」と言うことはできますか?

 贈与した財産を後から取り戻せるかどうかは、その贈与が「書面で行われたか」と「すでに渡したか(履行が終わったか)」によって、法律上の結論が真っ二つに分かれます。

まず、**「口約束(書面によらない贈与)」**の場合、民法第550条により、まだ財産を渡していない段階であれば、いつでも各当事者が撤回することができます。しかし、一度現金を渡したり、不動産の名義を変更したりして「履行」が完了してしまうと、たとえ口約束であっても、もはや撤回して返してもらうことはできません。

一方、**「贈与契約書などの書面を交わした贈与」**の場合、たとえ財産を渡す前であっても、原則として一方的に「やっぱりやめた」と撤回することはできません。書面を作るということは、それだけ重い法的責任を伴う合意であるとみなされるからです。

ただし、例外的に取り戻せる(解除できる)ケースがいくつかあります。

  1. 負担付贈与(ふたんつきぞうよ)の不履行: 「老後の面倒を見る」という条件で自宅を贈与したのに、相手が全く世話をしてくれない場合。この場合は、条件(負担)を守らないことを理由に契約を解除できる可能性があります。

  2. 忘恩(ぼうおん)行為: もらった側が、あげる側に対して著しい背信行為(ひどい暴力や虐待、殺害未遂など)を行った場合、判例上、撤回が認められることがあります。

  3. あげる側の生活困窮: 贈与したことで、あげる側の生活が立ち行かなくなるほど困窮してしまった場合、例外的に制限されることがありますが、これは非常に限定的なケースです。

行政書士としては、贈与を検討される際に「絶対に後悔しないか」を何度も確認します。特に不動産や多額の現金を一度渡してしまえば、取り戻すための法的手続きは極めて困難で、多大なコストと精神的苦痛を伴います。

後悔を防ぐための実務的な解決策としては、一度にすべてを渡すのではなく、Q7で述べた「暦年贈与」で毎年少しずつ渡す手法や、前述の「負担付贈与契約」を公正証書で作成し、相手の義務を明確にすることです。私たちは、お客様の「あげる勇気」と同じくらい、「もしもの時の安全策」を重視して契約書を作成いたします。