贈与・遺贈 Q&A

Q13. 他の兄弟に内緒で贈与しても大丈夫ですか?

 結論から申し上げますと、ご自身の財産を誰に贈与するかは本人の自由ですから、法律上、他の子供たち(兄弟)の同意を得る必要はありません。しかし、実務上、内緒で行う贈与には**「死後の発覚」という極めて高いリスク**が伴います。行政書士の現場では、この「内緒の贈与」がきっかけで、仲の良かった兄弟が一生の断絶に至るケースを数多く見てきました。

なぜ内緒にしてもバレてしまうのでしょうか。主な理由は2つあります。 一つは税務署による調査です。相続が発生した際、税務署は亡くなった方の過去数年分(状況によっては10年分)の銀行口座の動きを詳細に調べます。特定の子供の口座へ不自然な資金移動があれば、当然指摘が入ります。 二つ目は遺産分割協議での疑念です。他の兄弟は「親の通帳の残高が思ったより少ない」と必ず気づきます。そこから過去の通帳を遡られ、特定の兄弟への送金が見つかれば、隠し事をしていたという不信感から、本来スムーズに終わるはずの遺産分割協議が泥沼化します。

法律的には、特定の相続人への多額の生前贈与は**「特別受益(とくべつじゅえき)」**とみなされます。これは「遺産の前渡し」という扱いです。相続の際、この贈与分を遺産総額に足し戻して計算しなければならないため、内緒にしていたとしても、結局は他の兄弟の取り分を調整する議論の中で表面化することになります。

行政書士としてのアドバイスは、**「不公平を承知で渡すなら、必ず理由と証拠を残す」**ことです。内緒にするのではなく、なぜその子に多く渡すのか(例えば、介護の負担、家業の継承、病気への備えなど)を、他の親族にも納得してもらえる形で「付言事項(遺言書に添えるメッセージ)」や「家族会議の議事録」として残しておくことが、将来の争いを防ぐ唯一の道です。もし、どうしても内緒にしたい事情がある場合は、それが「特別受益」に該当しない範囲の金額か、あるいは法的に「持ち戻し免除の意思表示」を明確にした書面を作成しておく必要があります。