贈与・遺贈 Q&A

Q7. 「110万円の非課税枠」を賢く使う方法は?

贈与税の基礎控除である「年間110万円」の枠を利用した贈与は「暦年贈与」と呼ばれ、最もポピュラーな節税・資産承継の手法です。しかし、単に毎年110万円を銀行振込すれば良いというわけではありません。賢く、そして安全にこの枠を活用するには、いくつかの重要なポイントと、最新の法改正への対応が必要です。

まず、最も大切なのは**「定期贈与」とみなされないための対策**です。例えば、「1,000万円を渡したいから、毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与する」という約束をはじめに交わしてしまうと、税務署から「最初から1,000万円を贈与する約束(定期金給付契約)があった」と判断され、初年度に1,000万円全額に対して課税される恐れがあります。これを防ぐためには、一括の約束ではなく、毎年「今年は〇〇万円を贈与する」という独立した贈与契約をその都度結び、毎回「贈与契約書」を作成することが実務上の鉄則です。

次に、**「受贈者(もらう側)が通帳と印鑑を管理していること」**が不可欠です。親が子供名義の口座を勝手に作り、そこに親が印鑑を管理したまま入金し続けても、それは法律上「名義預金」とみなされ、贈与とは認められません。親が亡くなった際、その口座のお金は「親の遺産」として相続税の対象になってしまいます。子供が自分の意志でそのお金を使える状態にしておくことが、贈与成立の絶対条件です。

さらに、2024年(令和6年)1月からの税制改正に注意が必要です。これまでは亡くなる前3年以内の暦年贈与は相続財産に加算されていましたが、改正によりこの期間が「7年」へと段階的に延長されました。つまり、亡くなる直前の駆け込み贈与は相続税対策としての効果が薄れたことになります。そのため、できるだけ早いうち(親が元気なうち)から、長期にわたって計画的に贈与を開始することが、今まで以上に重要となっています。

行政書士としては、単に振込を勧めるだけでなく、将来の相続税調査に耐えうる「証拠」を毎年しっかりと残すサポートを重視しています。日付、金額、渡し方を明記した契約書の作成に加え、あえて110万円を少しだけ超える額(例:111万円)を贈与し、数百円の贈与税を納税して申告書をあえて残すことで、贈与の事実を確定させるという手法も、状況に応じてアドバイスいたします。