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千葉ニュータウンNews第14回

終活

14回 相続と終活の相談室

行政書士

    家族信託専門士 中家 好洋

認知症と遺言能力

 前回お書きしたように、65歳以上で認知症と言われている人は、約440万人といわれています。

 それに加え、MCI という軽度認知障害(認知症の前段階ではあるが、全ての者が認知症になるわけではないことに留意)といわれる方が約380万人(認知症予備軍)。あわせて約820万人いるといわれています。

 こうした認知症が生活以外の場面で問題になるのは、意思判断能力が失われて、法律行為が認められなくなるときです。ここでいう法律行為とは、遺言書であるとか、家族信託とか文書に残す必要のある行為や、契約行為などです。

 認知症と医師に判断された場合、遺言書は有効にはならないのでしょうか?

 この問題は、本人に遺言能力(意思能力)があるか否かという点です。

 医師の診察を受け、遺言能力の有無の判断を仰いだうえで、あると判断されれば有効でしょう。

 遺言は、その性質上、同意や代理を許さない行為であり、遺言能力さえあれば、単独で遺言ができます。

 遺言をするには行為能力は必要ありません。未成年者は、満15歳以上であれば単独で遺言ができます。ただし、遺言をするには、意思能力が必要ですので、意思無能力者の遺言は無効となります。また、成年被後見人は、事理を弁識する能力を一時回復したときは、医師2人以上の立会いがあれば、遺言ができます。被保佐人は、保佐人の同意なくして遺言ができます。被補助人も同様に単独でできます。

 遺言能力で一番問題となるのは、高齢者の方で認知症が進行し、遺言時に意思判断能力が存在したかどうかという点です。

(1)      自筆証書遺言の場合

 自筆証書遺言の場合は、自ら遺言内容を自筆することを要するので、裁判例でも、一般にその内容が合理的で理解可能なものであれば有効とされる傾向にあるようです。なお、自筆証書遺言の場合、意思能力の判断資料として、付言事項で遺言における財産の分配方法についての理由などを書くことをお勧めいたします。

(2)      公正証書遺言の場合

 公正証書遺言の場合は、遺言者は公証人に口授するだけで、自らは自書しないため、遺言当時に意思能力が存在したかどうかについて、遺言者の死後、裁判で争われているケースが散見されます。

 そこで、公証人は、認知症が疑われるケースでは、必ず事前に遺言者と面会し、その意思能力を確認したり、担当医の意見を聞いたり、その診断書の提出を求めたりして、その意思判断能力の有無を判断しています。

 

 さて、認知症と遺言能力については分かった。でも、うちの親父(お袋)はどうなんだということになるでしょう。

 しかし、私たちにはその権限がありません。私たちは基本的にお客様の味方のはずです。

 そこで、やはり遺言に関して第三者である医師の診察を受け、遺言能力の有無の判断を仰いだ方がよいでしょう。決して、公証人に判断を仰いではいけません。公証人は、自分が担当した方のことで、後で裁判沙汰にならないようにと考えています。ですから、きつめの診断になってくると思います。

 先ずは、医師の遺言能力があるという診断書を手に入れることです。

また、公証人の判断は、決してみな同じような結果になるわけではありません。あくまでも判断ですから、色々な判断がされます。もし、不満であるなら、別の公証役場にいくことをお勧めいたします。どこに行かなければならないというものではないからです。

とにかく、あきらめずに、トライし続けましょう。。

 

 

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