相続に関しては、まず最初に相続人が誰であるかを確定する必要があります。
相続人の調査は、被相続人(亡くなられた方)の出生から死亡までの戸籍を取得する必要があります。そして、相続順位に従い、被相続人の親族の戸籍も取得していく必要があります。
農業後継者となる相続人は、、被相続人と近い距離で住まわれている場合が多いですが、遺産分割を行うにあたっては、遠くに住んでいる相続人も含めて全員を調査する必要があります。
【コラム】相続人に認知症等判断能力のない方がいた場合
相続人の中に意思判断能力のないもの(例えば認知症の方)が一人でもいる場合、遺産分割協議はできません。遺産分割協議は相続人全員に判断能力が備わっていることが大前提だからです。遺産分割協議書に印鑑を押させるような行為をした場合は無効となります。
この場合、その人に代わって家庭裁判所に後見開始の申立てを行い、その人の成年後見人を選任してもらう必要があります。 手間だけでも大変なのですが、農地が相続財産の場合、もっと大きな問題が発生します。
成年後見人は本人の利益を損なうことができないので、遺産分割協議にあたっても、法定相続分を確保することが原則となります。その場合、農地が共有財産となってしまいまう可能性が高くなります。
本来その農地を継ぐべき人が、その農地についての意思決定権が成年後見人にもわたってしまい、自由な決定をすることができなくなります。
【コラム】相続人に行方不明者がいる場合
相続人の中に行方不明者がいる場合は、
①不在者の失踪宣告をする
②不在者の財産管理人を選任する
のどちらかを選ぶことになります。
①不在者の失踪宣告をする
失踪宣告をすることによって、行方不明の相続人は死亡したものとみなされますので、相続財産の名義変更等遺産分割手続きだ出来るようになります。
但し、失踪宣告をしても行方不明者の相続分が消えてしまうわけではありません。本人が後日出てきたときは、相続分を請求することが出来ます。
②不在者の財産管理人を選任する
家庭裁判所に不在者財産管理人の選任してもらいます。不在者財産管理人は、不在者の財産を管理したり、不在者の代わりに遺産分割協議に参加することになります。
【コラム】相続人に未成年者がいる場合
相続人の中に行方不明者がいる場合は、
①不在者の失踪宣告をする
②不在者の財産管理人を選任する
のどちらかを選ぶことになります。
①不在者の失踪宣告をする
失踪宣告をすることによって、行方不明の相続人は死亡したものとみなされますので、相続財産の名義変更等遺産分割手続きだ出来るようになります。
但し、失踪宣告をしても行方不明者の相続分が消えてしまうわけではありません。本人が後日出てきたときは、相続分を請求することが出来ます。
②不在者の財産管理人を選任する
家庭裁判所に不在者財産管理人の選任してもらいます。不在者財産管理人は、不在者の財産を管理したり、不在者の代わりに遺産分割協議に参加することになります。
相続人調査と並行して、遺産調査も行い、相続発生後の財産内容を調べる必要があります。
遺産調査は、プラス財産だけでなくマイナス財産も調べる必要があります。
・不動産の調査
農家の場合、不動産が多数に及ぶ場合があります。そのため、漏れがないように名寄帳を取得して調べる必要があります。納屋や倉庫といった建物が未登記のままになっていることがあります。未登記であっても、遺産に含まれますので、注意が必要です。
・預貯金・債権の調査
農地を持っている方は、大方農協に口座を持っています。しかし、一般の銀行口座を持っている方も多く、チェックが必要です。
預貯金は、相続発生日(亡くなった日)の残高を取得することになります。調べたその日の残高ではありません。
【コラム】相続発生後の賃料・小作料
遺産は相続発生時に被相続人(亡くなった方)が所有していた一切の財産であるので、相続発生後に遺産に含まれる不動産(農地など)から生じたか果実(賃料、小作料)は、遺産の範囲に含まれません。
もちろん、遺産分割により農地を取得する相続人が決まれば、分割後の果実はその相続人に帰属します。その一方で、相続発生後から遺産分割までの賃料債権については、法定相続分に従って当然に分割され、各相続人が取得するものとされています。
相続方法の決定は、相続するのか、しないのかを決めることです。
財産調査をもとにプラスの財産とマイナスの財産をを確認して、相続開始(被相続人が亡くなったと同時に相続は開始されます)から3ヶ月以内に相続方法の決定を行う必要があります。この期限を過ぎますと、単純相続をしたことになります。
相続開始を知った日から、3ヶ月以内の熟慮期間に限定承認の手続きしなかったときは、自動的に単純承認をしたことになります。
自動的に単純承認をしたことになるケースとしては、
・相続人が相続財産の全部または一部を処分した
・相続人が相続開始を知った日から3ヶ月以内に限定承認または放棄をしなかった
・相続財産の全部または一部を隠匿し、私的にこれらを消費した。または故意にでこれらを財産目録に記載しなかった(相続人が限定承認または放棄をした後でも適用されます)
このようなことがあった場合、たとえ本人に相続する意思がなくても単純承認をしたことになります。
たとえば被相続人が多大な借金を残してしまった場合。相続の結果、その借金を受け継ぐことにってしまうこともあります。
しかし、相続人が被相続人の財産や借金を「引き継がない」と申請することができます。これを「相続放棄」といいます。
ただし、限定承認をするには、いくつかの条件があります。
ひとつは、相続人が相続開始を知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所に限定承認の申立をしなければならないことがあります。もし3ヶ月を超えてしまった場合、自動的に単純承認をしたことになります。単純承認をすると、基本的にプラス・マイナス両方の財産をすべて相続することになります。
また複数の相続人がいる場合は、相続人全員が一致して限定承認を行わなければなりません。
なお、相続開始を知った日から3ヶ月経ってしまっても、条件によっては相続放棄できる場合があります。
【アドバイス】負債がある場合
被相続人(亡くなった方)に負債がある場合は、相続するか否かを慎重に検討しなければなりません。農家の場合、事業資金を金融機関から借り入れする場合があり、その借入れが多額に上ることもあります。
被相続人の負債について、手持ちの資料等の手掛かりがない場合には、信用情報開示制度を利用し、取得することが考えられます。信用情報機関としては、株式会社日本信用情報機構(JICC)、株式会社シー・アイ・シー(CIC)、全国銀行個人信用情報センター(全銀協)の3つが挙げられます。金融機関からの借入れであれば、ほぼ上記3機関の何れかに信用情報が登録されています。
逆に、個人や金融機関でない企業からの借入れの場合には、信用情報がないことが通常です。
その結果、資産よりも負債が上回ていることが判明した場合、相続放棄を検討すべきです。また、農業後継者である相続人に遺産を集中させたい場合に、他の相続人が相続放棄を行いことも考えられます。この場合、相続放棄は家庭裁判所での手続きが必要で、大変なので、遺産分割協議書の中で、相続の辞退をすると書くことで済む、辞退の方がいいと思います。
【アドバイス】補助金がある場合の手続き
農業補助金の多くは、交付後に営農を継続することが要件となっています。そのため、交付後に被相続人が営農の要件を満たさなくなった場合、補助金をしなければならない場合があります。
また、農業補助金を活用して購入した財産を処分する場合、交付を受けた補助金の一部を返還しなければなりません。
補助金の事業主体である国、地方自治体の補助金等交付規則において、補助金により取得した財産の譲渡、交換、貸付等を行うには当該自治体の長の承認を要するとされていることが普通です。このため、相続人が遺産に含まれる農機具、農業施設等の処分する場合は、補助金等の交付を受けたものでないかを調べる必要があります。
農地の場合、全員に平等に分けることがほぼできないため、被相続人が何らかの対策をうっているかもしれないので、注意する必要があります。例えば、財産の全てを農業従事者である親族(いわゆる跡取り)に承継させるという遺言を作成していることも少なくありません。
遺言には、普通方式の遺言(自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言)と、特別方式の遺言(危急時遺言・隔絶時遺言)があります。
ここでは自筆証書遺言と公正証書遺言のみを説明いたします。
(1)自筆証書遺言
遺言者がその全文、日付及び氏名を自書し、押印する方式の遺言です。
もっとも、相続財産の目録に関しては、パソコン等で作成することや銀行口座のコピーでも構いません。ただし、平成31年1月13日以前のものは注意が必要です。
(2)公正証書遺言
公正証書遺言の方式は、以下のとおりです。
①証人2人以上の立会いがあること
②遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること
③公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること
④遺言者及び証人が、各自署名押印すること
⑤公証人が、上記の方式に従って遺言書を作成したものであることを付記して署名押印すること
【コラム】遺言の利用状況
遺言を書いている方の割合ですが、毎年の公正証書遺言の件数と、これに自筆証書遺言を足すのですが、自筆証書遺言は分かりません。ただし、遺言として有効な家庭裁判所の検認件数は分かっているのでその件数を足してみると、65歳以上の高齢者の約8%が遺言を書いているのではないでしょうか。
【コラム】遺言に記入漏れがあった場合
「○○に全ての財産を相続させる」という遺言書であれば問題ないのですが、個別財産を分ける遺言の場合、記入漏れがあり、遺言書に書かれていない財産が出ることがあります。この場合、遺産分割協議をしなけれななりません。
それで、相続人に判断能力のない人がいたならば、せっかく遺言書まで書いたのに、法定後見人を付ける羽目になります。
このように、相続後のトラブルを防ぐために、生前に「上記以外の財産は、○○に相続させる」というように書いておくことが大切です。
【コラム】遺言と異なる相続をしたい場合
有効な遺言が存在する場合でもあっても、相続人全員の合意によれば、遺言と異なる内容の遺産分割をすることが可能です。
遺留分とは、一定の範囲の法定相続人に認められる、最低限の遺産取得分のことです
民法は、被相続人と密接な関係のある人を法定相続人と定めて遺産相続をさせることにより、なるべく被相続人に近かった人が遺産を引き継げるように配慮していますが、反面、被相続人自身の意思も尊重しなければならないので、遺言や贈与によって財産を処分する自由も認めています。
しかし、完全な自由が認められてしまったら、相続人の期待があまりに裏切られてしまうので、法律は、一定の範囲の近しい相続人に遺留分を認めたのです。
この一定の範囲の法定相続人ですが、配偶者と直系の子や親のことをいい、第3順位の兄弟姉妹は入っていません。
では、その最低限の遺産取得分とはどれくらいでしょう。
相続人が親のみの場合を除いて、全体で認められる遺留分は1/2です。相続人が親のみの場合は1/3となります。
遺留分を請求された者は、遺贈や贈与を受けた者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の請求をすることが出来るようになります。しかし、遺贈や贈与を受けた者が金銭を直ちに準備することが出来るとは限りません。その場合、裁判所に対し、支払期限の猶予を求めることが出来ます。
財産調査に基づいて財産目録を作成したら、遺産分割協議を行います。遺産分割(財産の分け方)は、相続人全員での協議によって決めることが前提です。
相続が開始されると、すべての相続財産は相続人全員の共有となり、共有の相続財産を分けていく手続きが遺産分割です。
遺産分割協議は、口頭でも行うことはできますが、
遺産分割には、①現物分割、②代償分割、③換価分割、④共有分割という4つの方法があります。
①の現物分割とは、相続人どうしで相続する金額や割合などを定めて、遺産そのものを分割する方法です。
主な遺産が持ち家だけという場合は簡単に分けることが出来ません。
そこで、相続分に応じて持ち家を相続人の共有にすることがあります。しかし、共有となると建替えや売却を検討するときにも、共有者全員の同意が必要となります。この、共有分は他人に譲渡できるし、債権者が差し押えをすることもできるので、トラブルのもとになりかねません。
②の代償分割とは、相続人の1人が遺産を取得して、その代償として他の相続人に金銭などを支払う方法です。
③の換価分割とは、相続した遺産を金銭に変えて(換価)、その金銭を分割する方法です。代償分割するための資金がない場合、持ち家を誰も相続したくない場合、納税のための資金を現金で確保したい場合などに検討されています。
ただし、持ち家を売却するための手間と費用がかかり、売却益があれば譲渡所得税と住民税の課税対象になる点には注意が必要です。
④の共有分割とは、遺産を特定の相続人に単独で取得させず、相続人間の共有とする方法です。例えば、被相続人が耕作していた農地を、相続人が共同で耕作するような場合です。
【コラム】換価分割
日本の大金持ちが住んでいることで有名な田園調布ですが、むかしはもっと大きな区画で住まわれていたようです。その後世代が代わることで、相続税を払いきれなくて、換価分割がすすみ、その大きな土地を小さく分けて販売し、今のように小さい(それでも十分大きいのですが)住宅地になっています。
【アドバイス】共有分割のデメリット
共有分割をする場合、農地が共有になることのデメリットですが、農地の共有者のうち、農業を営む者は相続税の納税猶予を受けることができますが、農業をおこなわない者は、取得した農地の共有持分について納税猶予を受けることはできません。
また、一旦共有分割とした後に共有分割を行う場合、農地法の許可が必要となります。
これに対し、共有持分の放棄であれば農地法の許可は必要ありませんが、共有物分割と異なり、持分が増加する共有者に贈与税、不動産取得税が課税されます。
このように、共有分割を選択すると、事後の法律関係が複雑になりますので、注意が必要です。
相続人が遺産分割により農地を取得する場合は、農地法3条の許可は不要です。
また、包括遺贈の場合も、許可は不要です。一方で、特定遺贈の場合、受遺者が相続人であれば許可不要ですが、相続人以外の場合には許可が必要です。
農地法3条許可が不要の場合、農地法3条の3の規定に基づき、農地取得の届出を行う必要があります。
※包括遺贈=個々の財産を具体的に指定しないで、相続財産の全部またはその一部分など割合を指定し、ひとまとめにして行う遺贈。
※特定遺贈=特定の財産を指定して行う遺贈。
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