財産分与

財産分与の対象となる財産の範囲

 財産分与の対象となるのは、婚姻期間中に形成された夫婦の実質的共同資産です。

 

子の名義の預金

 子名義の預金は、子の固有資産ではなく、夫婦の資産から子名義で蓄えた預金であれば、財産分与の対象となります。

 

将来の退職金

 夫が将来支給を受ける退職金は、夫が支給を受けることについて、高い蓋然性を有する場合は、財産分与の対象財産となることが、多くの判例で認められています。

 

厚生年金基金・企業年金(以下「企業年期等」という)

 夫が将来受給する予定の企業年金は、財産分与の対象となります。

 年金の全加入期間のうち、同居期間の加入期間は、妻も保険料支払いに貢献したといえ、同居期間中に対応する分は、財産分与の対象財産と考えられます。

 年金機構から資料を取り寄せてください。

  

債務も財産分与の対象

 不動産や預貯金等の積極財産だけでなく、住宅ローン等の負債がある場合、この債務は、財産分与の対象になります。したがって、資産の価額が負債の額より多い場合には、資産の価額から負債の額を控除した金額を財産分与の対象となります。債務額の方が資産額より多い場合、裁判実例では財産分与なしという判断になることが多いようです。

 

財産分与の基準時

 実務では、通常、別居時に存在した財産を財産分与の対象財産としています。

 したがって、別居の時点において双方が有していた預貯金、株式、不動産を清算することになります。ただし、夫が、現在もそのまま不動産等を所有しているのであれば、不動産等の時価については、別居時ではなく、離婚時の時価で評価するのが公平といえます。また、夫が、別居後、不動産等を売却していた場合は、その売却代金を評価額とすべきでしょう。

 

財産分与の清算割合

 自宅の土地建物が夫婦が共同して形成した資産である場合には、原則として2分の1としつつ、個別事情に応じて修正がなされています。

 

財産分与と有責性

 財産分与は婚姻破綻について有責であっても請求することができます。財産分与のうち慰謝料的要素については、請求する側の有責性が影響する場合がありますが、財産分与については、有責性は影響しないと考えるのが一般的です。

 

財産分与と慰謝料の請求期間

 離婚後2年間は財産分与を求めることができます。

 離婚後3年間は慰謝料を請求することができます。

 

財産分与と慰謝料の関係

 財産分与と慰謝料の関係について、最高裁は「離婚における財産分与の制度は、夫婦が婚姻中に有していた実施上共同の財産を清算分配し、かつ、離婚後における一方の当事者の生計の維持をはかることを目的とするものであって、分与を請求するにあたりその相手方たる当事者が離婚につき有責のものであることを必要としないから、財産分与の請求権は、相手方の有責な行為によって離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったことに対する慰謝料の請求権とは、その性質を必ずしも同じくするものではない。したがって、すでに財産分与がなされたからといって、その後不法行為を理由として別途慰謝料の請求をすることは妨げられないというべきである。」(最判昭46.7.23)

 

内縁と財産分与

 内縁を婚姻に準ずる関係(準婚)と解していますから、財産分与の規定も内縁に適用されます。

 


基本的な離婚業務の流れ

(1) (夫、妻)からの離婚協議書作成依頼

(2) 委任状、同意書を受領

(3) 依頼者から着手金・実費預り金を受領

(4) 戸籍、住民票調査

(5) 他方へ通知書発送

(6) 他方より依頼しない旨の通知があれば、この段階で終了し、家庭裁判所での調停を紹介します

(7) 他方より委任状の提出があれば、面談のうえ、依頼者の要望に対する意見を聞きます

(8) 関連財産調査

(9) 離婚協議書案を作成し、双方に確認していただきます

(10)  双方が合意すれば、内容を離婚協議書原案として作成し、公証役場へ提出します

(11)  双方へ公正証書を引き渡します

(12)  残金、実費精算を行います

※ なお、公正役場は平日のみの営業のため、双方が出席できないことも考えられますし、お互いに顔を合せたくないため出席しない場合が考えられます。その場合のオプションとして代理出席も承っております。